今回はママチャリに多用される内装変速機のリアスプロケット交換についてです。
変速ギアというと、外装6段などと呼ばれるようないくつもの歯(ギア)が重なって出来ている集合体をイメージする方が多いのではないでしょうか。
そんななか、一部ママチャリ(シティサイクル)には内装ギアを装備するものがあります。内装3段が一般的ですが、3段なのに構成されるリアギアは実は1枚しかありません。
実際に観察してみると分かるのですが、内装変速の仕組みは後輪のハブ軸に収められているインター3と呼ばれる機構で変速を行っています。
では、インター3に装備されるシングルスプロケットの変更は行えないのかというとそんなことはありません。自分の求める大きさのシングルギア(小ギア)を購入することで部品交換を行うことが可能です。
今回は私の自転車を参考にして内装三段リアスプロケットの交換を行ってみたいと思います。
この記事の内容
- 内装用スプロケットの交換方法
- 交換の際はギアとケースの干渉に注意
- 実際に起きた干渉問題と解決方法
- 内装用スプロケットについて考える
内装用スプロケットの交換方法
下準備
今回、使用する自転車は半壊自転車の再生企画で材料にしているダンロップの自転車です。内装三段を搭載した一般的なママチャリで、元々14Tのスプロケットが装備されていました。
スプロケットを交換するためにまず後輪のナット、チェーン等を外し後輪のみの状態にします。外し方の手順は以前まとめたので、以下の記事をご覧下さい。
スプロケットとチェーンケースの干渉問題
作業の前にスプロケットとチェーンケースの干渉問題について一点だけ。
後輪スプロケットの特徴として、ギアの数字が大きくなるほど漕ぎ心地が軽くなるというルールがあります。しかし、詳しくは後述しますがシティサイクル(ママチャリ)はチェーンケースが装備されていることが多く、大きすぎるスプロケットはチェーンケースに干渉することがあります。
そんな事情もあるので、まずは観察をしてみましょう。後輪が外れた本体(フルカバーチェーンケース)に手元にある大きめのスプロケットをあてて当たりをつけます。
ちなみに手元にあるスプロケットは14、16、18、20Tの4種類です。14Tは装備中なので除外、16Tはママチャリ(シティサイクル)整備録に記載したブリヂストン スケッチブックと同社トレンディに初期装備されており、搭載を確認していますのでこれも除外します。
―18、20Tスプロケットを試す
まずは18Tスプロケットからあててみます。まだギアとケースの間に若干の余裕が感じられ、収まりそうな気がします。ただ、これにチェーンをかけるのでまだ何ともいえないですね。
次に20Tです。うーん、これは現状でギリギリ…!チェーンをかけたらどこかしら引っかかるのではないかな(^^;)
以上の観察から何となく搭載できるスプロケットの限界がみえますね。今回は18T(+4T)装備に挑戦し、搭載不可能な場合は16T(+2T)を使用し自転車のグレードアップを図りたいと思います。
実際の交換方法
では実際にスプロケットの交換をしてみます。ここから先は後輪が外れていることを前提とします。
ー初期装備されているスプロケットを取り外す
スプロケットはスナップリングによって固定されているのでこれを外します。細めのマイナスドライバーがあればそれで十分です。緑の丸の部分にマイナスドライバーを入れて、てこの原理でくいっと力を入れると外れます。
マイナスドライバーは1本でも外れますが、取り付けの際に2本使用するので、この時点で2本用意できると後の作業がスムーズです◎
リングを外すとスプロケットが外れます。そこに18Tスプロケットを装備、スナップリングを取り付けていきます。
余談ですが、スプロケットを外した後のハブ軸周辺が汚れている場合はついでに清掃しておきましょう。パーツクリーナー等で汚れを落とすことができますが、ハブ内部のグリスが落ちないように注意する必要があります。布にスプレーを吹き付けて優しく拭くのが良いと思います◎
ー少し戸惑うスナップリングを取り付け方
18Tスプロケットを取り付け、スナップリングで固定します。スナップリングが非常に固いので初めて触る方は驚くかもしれませんが基本を抑えれば大丈夫です。
スナップリングには切れ込みが入っています。そこをスタート地点として、2本のマイナスドライバー等を使用し、両側から均等にはめていくというイメージです(写真×印がスナップリング切れ込み、○印のゴールを目指す)
要するにやっていることはタイヤ交換と同じです。スナップリングがタイヤ、マイナスドライバーがタイヤレバーという訳です。てこの原理を利用する点まで同じですね。
最初はギアが小さくて手こずるかもしれませんが、タイヤ交換のイメージで作業を行えば決して難しい内容ではないですよ!
スナップリングの取り付け方法はタイヤ交換の要領と同じ!ギアの小ささに惑わされずに丁寧に少しずつはめていこう!
ーチェーンの取り付け
今回14Tから18Tに改良を行います。元々装備されていたチェーンでは、4T増やすとなると長さが足りなくなり、さすがにそのままポン付けという訳にはいかなそうです。
個人的に2T増加程度(例:14→16T)なら、チェーン引きの調整で収まるかな?と思うのですが、4Tはさすがに無理かな…(^^;)
ちなみに私のダンロップの自転車は前チェーンリングが32T、後ろスプロケットが14Tでチェーンは94リンク仕様でした。2T程度の増加を無視するなら+2の96リンクで足りる気がしますが、多くてたるむ分には後で切ればいいので+4の98リンクとします。笑
また、CBN Bike Product Review様のSHIMANO Y73T11830 18Tの記事に94+4リンクとした内容があったので、そちらも参考にさせて頂きました(*1)
チェーン交換の作業内容としてはミッシングリンクを外すか、チェーンカッターでチェーンを切って外し、新しい自転車のチェーンを98リンクに調整(チェーンカッターで切断)その後、取り付けるといった流れです。
新品チェーンへの交換方法については以前記事をまとめましたので、詳細が気になる方はあわせてご覧頂ければと思います。
一点注意があるとすれば、繋ぐ際のミッシングリンクの向きでしょうか。進行方向に部品のU字の底がくるようにします。逆向きは外れる危険があるので絶対に避けて下さい。
チェーンを繋ぎ、後輪を元に戻しつつチェーン引きを締め付けていきます。チェーン引きを締めるときは締め具合が左右均等になるようにします。段々とチェーンのたるみがなくなり無事に回るようになりました。98リンクで正解だったようです。
実は起こったスプロケット干渉問題!その解決方法は…
ここまで順調そうな内容を書き連ねましたが、実は18Tスプロケットでチェーンケースとの干渉が発生しました(T-T)
干渉が発生したのは、チェーンケースのふたをとめるネジの部分です。
ふたを閉めた時点でスプロケットとチェーンケースの接触がなかったので「よっしゃ!」と思っていたのですが、最後にネジを締めた時にそのねじがチェーンに触れるようでチェーンが回らなくなりました。汗
解決方法として2つの案が思い浮かびました。
- ねじの呼び長さを短いものに変更する(=ねじの交換)
- ねじにリング類をかませて呼び長さを短くする(=リングの追加)
私が取った案は(2)の現状のねじにリングを追加する方法です。
フルチェーンカバーに付いているねじの呼び長さをノギスで計測したところ、約5.5mmと分かりました。どれだけリングを噛ませて短くしたらいいか検討がつきませんが、手持ちの余剰部品を探してみます。
とりあえず見つけたのはワッシャーとばね座金です。用意したサイズはどちらもM5ですが、ねじに対してジャストサイズではなかったためM4以下が適正だと思います。
ただ、今回は呼び長さが短くなるかつ、ぐらつかない程度のものであれば何でもOKだったのでそのまま使うことにしました。
ちなみに厚さを計測するとワッシャーが0.77mm、座金が1.42mm程度だったので計2.2mm程度の厚さとなります。
実際に装着した様子を写真でみると厚さ半分とはいきませんが、結構な長さを稼いでいますね。
リングを追加した状態で組み付けを行うとチェーンに干渉することなく、しっかりと固定することができました◎
これにてスプロケット18T化終了ですー!
内装スプロケットについて考える
ここからは内装スプロケットについて考えてみたいと思います。乗り心地軽くなったしもう用はなし!の方は読まなくて大丈夫です。笑
内装用スプロケットの変更は可能
ここまでの交換作業からも分かる通り、内装用スプロケットの交換は可能です。販売されている自転車は14Tスプロケットが装備されていることが多いようです(私の自転車は2台16Tが装備されていました)
しかし、実際のところは様々な数値のスプロケットが販売されています。私の手持ちのスプロケットギア数は写真左から14、16、18、20Tです。他にも19や21Tなどありますが、あんまり見かけないかな?
リアスプロケットは数字が大きくなるほど走行中の乗り心地が軽くなります。その代わり、最高速度が削られるというデメリットもあります。
外装ギア中心の話ですが、スプロケット数値変更と乗り心地の変化の話は以下の記事にもまとめています。
―せっかくだから内装スプロケットを比較してみる
14~20Tのスプロケットを重ねてみると、サイズの違いがよく分かりますね。スプロケットの直径が気になったので、試しにノギスで計測してみました。
14T | 16T | 18T | 20T | |
直径(mm) | 62.94 | 71.29 | 79.44 | 87.21 |
おおざっぱですが上記のような数字となりました。14Tと20Tで2.5cm近く差があるわけで、こういう具体的な数字を見るとスプロケットとケースの干渉問題もイメージがしやすいです。
14Tが標準装備される日本ママチャリ業界の不思議
次は日本のママチャリに初期搭載されがちな14Tスプロケットについて。
スポーツ自転車ならば、重たいギアを載せて速さを求める気持ちは分かります。しかし、ママチャリ(シティサイクル)の快適さって速度でしょうか?
住宅街の細道、荷物を載せて坂を上る普段使いの環境を考えたとき、速度よりも漕ぎ心地(軽さ)が楽な方が快適!と感じる方がいてもおかしくないと思います。
しかし、初期装備されているギアは14T(たまに16T)がほとんどで、坂道の多い日本の自転車環境に向いている設定なのかと考えると疑問を残します。
例えば私の手元に14T(ダンロップ)16T(スケッチブック、トレンディ)が装備されたの自転車があります。平地や都内のちょっとした坂ならどちらでも対応できるのですが、勾配がきつくなるにつれて14Tは手押しです(^^;)
近所にある一番きつい坂道は16Tでも嫌になるので、汗をかく夏場などはやはり手押しです。筋肉質な方なら少ない数値のスプロケットでも急な坂道を漕ぎきれます。でも、ママチャリは老若男女が様々なシーンで使用するわけです。
全員にスプロケットの変更を勧めるつもりはさらさらありませんが、購入時にもう少し選択の幅があれば、自転車に乗ることが楽しくなるんじゃないかなあと思う今日この頃です。
だらだら書きましたが、街乗り自転車くらい楽して乗りたくないですか?笑
もう少し踏み込んで内装ギア比について考える
リアのスプロケットの数値を大きくすると軽くなると書きましたが、正確にはギア比が低くなるために軽くなるとなります。このことについてもう少しだけ考えてみます。
ギア比は以下の式によって求まります。
【ギア比の求め方】
フロントのギア(T) / リアのギア(T) = ギア比
(T)…Teeth、歯数、丁などの意
上記の式から求まったギア比の数値は以下の意味を持ちます。
求まったギア比の数字 = ペダルを一回転漕いだ時にタイヤが何回転するか
私のダンロップの自転車の場合フロントのチェーンリングは32Tです。これに14、16、18、20Tを掛け合わせたときどのような数値になるかみてみましょう。
ちなみにwikipediaのインター3のページを見るとそのギア比は1速 0.733、2速 1.00、3速 1.36と分かったので求まった数値に乗算します(*2)
F=32T | 1速 | 2速 | 3速 | |
↓R= | ギア比 | 0.733 | 1.00 | 1.36 |
14T | 2.29 | 1.68 | 2.29 | 3.11 |
16T | 2.00 | 1.47 | 2.00 | 2.72 |
18T | 1.78 | 1.30 | 1.78 | 2.42 |
20T | 1.60 | 1.17 | 1.60 | 2.18 |
※小数点第三位を四捨五入しました。
電卓を打っていたら途中でこんがらがりましたが(汗)これで合ってるはず!
しかし、数値だけ載せても何のこっちゃ分かりづらいので私の所有しているプレシジョントレッキングのギア数値と比較してみましょう。まず購入当初の状態(フロント1速×リア7速)です。
―外装7段自転車と比較してみる
後(MF-TZ21) | ||||||||
丁 | 28 | 24 | 22 | 20 | 18 | 16 | 14 | |
前 | 42 | 1.50 | 1.75 | 1.91 | 2.10 | 2.33 | 2.63 | 3.00 |
プレトレは改良を加えなければ、市販される一般的な外装7段シティサイクルです。
最も軽い時で1.50なので内装3段14T1速よりは軽く、16Tでほぼ同じ数値です。18Tにすれば1.30なので、軽さの面では内装3段の方が軽いということになります。
対して最も重たい数値はプレトレは3.00になります。それと比べると内装3段14Tは3.11で、プレトレより重いということになります。
これら比較から見えてくるのは、外装○段は段数が多く搭載されているから軽い!速い!ではなく、実はギアとギアの隙間の数値を細かく埋めているから段数が多いということです。
数値が細かく設定されていると走行中の変速がスムーズに感じるようになります。内装3段は変速が3つしかなく、1速1速の数値が離れているためその点は弱いですね。
乗り心地の変化を求めるならば、自転車の買い替えではなく、まずスプロケットの交換を検討することが良さそうです(内装スプロケットなんて500円もしませんし◎)
―フロント3段×リア7段の自転車と比較してみる
次にプレトレのフロントを多段化したフロント3速×リア7速時代の数値を見てみましょう。フロント3段にした目的は峠道など急な坂道を走るためです。
後(MF-TZ21) | ||||||||
丁 | 28 | 24 | 22 | 20 | 18 | 16 | 14 | |
前 | 28 | 1.00 | 1.17 | 1.27 | 1.40 | 1.56 | 1.75 | 2.00 |
38 | 1.36 | 1.58 | 1.73 | 1.90 | 2.11 | 2.38 | 2.71 | |
48 | 1.71 | 2.00 | 2.18 | 2.40 | 2.67 | 3.00 | 3.43 |
上記数値のなかで特に注目して頂きたいのは、緑色で塗ったフロント2速にあたる38Tのラインです。
フロント2速(38T)とリアギア7速(28-14T)の組み合わせは街乗り用途で多用します。最も軽い数値をみてみると1.36とあります。
この数値を内装三段で狙うとすると、16T1速の1.47か18Tの1.30ということになります。ママチャリは総じて重たいですから、その点を加味して軽めの1.30を持つ18Tにすれば漕ぎ心地の軽さは確保できるでしょうか。
ちなみに20Tの1.17も良さそうに見えますよね。これはプレトレでいうところのフロント1速リア2速の組み合わせと同じ状態です。では、これはどの状態で使うのかというと、私の場合峠を上るときです。例えばヤビツ峠の山頂できつくなったとき、旅装備全開で知床峠を上ったときなど。
上記記事のような道を走るときに使用しました。普段はまず使わないかな…。
つまり軽くしすぎると、街乗りにおいて使用される場面は極端に限られるということを意味します。20Tを搭載した場合、1速は激坂のエマージェンシー用となるでしょうから、通常走行時は2、3速の2つでやりくりすることになりそうです。
また、20Tは3速のギア比が2.18となる点も注意が必要で、これは14Tスプロケットでいうところの2速(2.29)の数値に近くなります。通常は速度を出したいときや下り坂に3速に入れますが、20Tの3速は14Tの2速とほぼ同等。3速の本来の機能が封印されたようなものですね。
このようにただ軽さを求めて一番大きなスプロケットを搭載すれば良い、という訳ではないところが奥深いです。山の中や峠の中腹で暮らしているからとにかく軽いの!という方ならアリですが、どこまで軽くするかは各々が考えたい点です。
重くて改良したいけれど、どこまで数字を上げればいいか分からない…という場合は、現状から2Tずつ上げていくというやり方でも効果が実感できると思いますよ。
その上でですが、現在14Tを使用していて漕ぎ心地の軽さを求めようとする場合、街乗り主体なら16Tを、坂道が多い街で暮らしている場合は18Tを選択すると面白そうかなというのが私の考えです(もしくは肉体派の方は足を鍛えましょう)
最後に私の走行環境とママチャリに対する考え方は、
- きつい坂道が多い
- 前後のカゴに多くの荷物を載せて重くなる(楽をしたい)
- ママチャリに速度は求めない
以上の環境を想定していることから、軽めの18Tをチョイスしています。
まとめ
以上、内装用スプロケットの交換方法とスプロケットに関する考察でした。
スプロケットというのも中々面白いもので、たった1枚の歯車を交換するだけで、別の自転車のように乗り心地を変化させることが出来ます。
しかし、内装3段というのはギア比を3つしか設定することが出来ません。なので速度、軽さなど、どこに”旨み”を出すかは人それぞれ好みが分かれそうですね。
世の中の大半のママチャリユーザーは”乗れればいい”という方ばかりですからギア比のことなど考えません。というより知らないのです。
「内装3段より外装6段の方が段数多いし便利そう!買い換えよう!」
そんな考えの方がいても不思議じゃないですよね。でも、本当に大切なのはギア比の考え方です。ギア比の考え方を知っていれば内装だろうが外装だろうが、今よりちょっと快適にすることは十分できると思います。値段も安いですしね。
内装3段に限っていえば、世の中の謎の14Tスプロケット縛りが溶けて購入時に選択肢の幅が広がったら、ほんの少しだけ楽しい世の中になるのになあなんて思いながら、今回駄文を書き連ねてみました。
参考にしたサイトや文献
*1 CBN Bike Product Review | SHIMANO Y73T11830 18T
*2 wikipedia| インター3
クロスカブ本体の改良
本体(JA45)購入 / 外装カバーの着脱 / リアキャリアの拡張 / リアボックスの追加【リアキャリア延長による加工も】 / ホムセン箱の改良(ボルトやフックの増設) / マルチマウントバーの増設 / スロットルアシスト / ナンバープレートに荷掛けフックを追加 / 2ポートUSB電源 / バーエンド着脱とスロットルパイプの交換 / グリップヒーター取り付け / サイドバッグサポート / パニアバッグ取り付け / 右サイドスタンド / エアバルブ角度の変更 / テールランプのLED化 / エンジンオイルの交換 /
クロスカブまわりの道具
身に着けるもの(ヘルメット、ジャケット、手袋etc…)
ヘルメット選び【SHOEI Z7】 (ヘルメット選び方) / グローブ3種【夏・春秋・冬】 / バイクジャケット / 脊髄プロテクターの追加 / ニーガードプロテクター / トレッキングシューズ / レインウェア