『北海道海岸線一周(14) 道東編6 -静かにそびえ立つ知床峠を越えて-』
ー前回までのあらすじ(前回は【道東編5】強風!野付半島の戦い【厚床→標津】)
厚床から標津まで移動しました。
途中、標津の街を前に野付半島が現れます。海岸線ルールの適応により、海風が吹き荒れる半島の道を50km近くも走り回る羽目に。
終日風と戦いながらも標津のキャンプ場で一泊します。そこからは知床半島を望むことができ、前半戦最大の山場であろう知床峠に挑戦する日が近いことを実感するのでした――
北海道14日目…いざ、知床半島へ
知床のクマ対策
この日で北海道も14日目。東京で2週間の世暇を与えられたら、ただただぐーたらと過ごしそうなものです。環境によっていかに人が変わるかを思い知らされます。
さて、本日向う知床半島ですが、世界でも有数のヒグマの出没地帯です。行くか行くまいか悩むものの、海岸線ルール張ってる以上は行くしかない。
一応ヒグマ対策として、ベルやスプレーなどがありますが、正直、自転車乗りのクマ対策なんてあってないような気も…。
今まで出会った自転車乗りはハンドルにベルを付けている人が多い印象でしたね。ちなみに私は買い忘れていますので、峠までに用意できれば。
だからとりあえず、何か音が鳴るもの…ということで。
蚊取り線香と携帯ラジオを自転車(プレシジョントレッキング)の前カゴに取り付けておきました。
蚊取り線香は走り出すとカゴにぶつかってカラン、コロンと鳴ります。
カゴに蚊取り線香、荷台に洗濯した衣類を干して走る。東京でこの状態はホー〇レス感待ったなしですが、北海道なら旅人です。…多分。
いざ、知床半島に向けて出発
途中、網走に向かう国道244号か国道335号を選ぶ分岐地点が現れるので、知床方面の国道335号を進みます。
知床半島に入りたての頃は、平坦な海岸線をひたすら走っていきます。羅臼(らうす)の町の手前で少しのぼり始めました。
ちなみに北海道を南から北上すると羅臼(らうす)の町が、北から南下するとウトロの町に辿りつき、それらの町から互いに知床峠を目指す形となります。
それぞれ坂の傾斜に特徴がありまして、羅臼から知床峠をのぼると傾斜がきつく、ウトロからのぼると緩やかです。私は北上組なので羅臼からのきつい傾斜をのぼることになります。
関東住みの方ならヤビツ峠の例えで伝わるかな?羅臼側が表ヤビツ(きつい)、ウトロ側が裏ヤビツ(緩やか)的な感じですね。
海岸線を少し走っているうちに知床半島に入ったことを知らせる看板がありました。いよいよって感じがしますね。
途中、漁師の店浜っこ山ちゃんを発見。
ここの話は自転車、バイク乗りの人と話すと本当によく聞きます。皆さん決まってご飯が美味しい!と言うので興味はあったのですが、縁がなくて泊まれなかったのが残念。
道の駅「知床・らうす」に到着しました。
ここでクマ避けの鈴が販売されていたので購入しました。苦し紛れではありますがハンドルに取り付けてとりあえずは準備OK。
羅臼の町まで来ると、もはや知床峠のふもと。覚悟決めていくしかないですね。
知床峠のふもとで熊の湯に立ち寄る
さて、道の駅を出るとすぐに知床峠を示す看板が出現します。知床峠まで16km、標高は783mだそうです。
ちなみに先ほど例で出した関東のヤビツ峠は海抜761mのようで、やはりどこか似たものを感じてしまいます。ただ、知床はヒグマ出没のオプションが付きますが…。
のぼり始めるとすぐのところに「熊の湯」という無料の温泉があります。
知床峠のふもとに温泉があるという噂は聞いていたので、入っていくことにしました。
温泉は徒歩で少し行ったところのようなので、自転車を止めて先へ進みました。
貴重品類やお風呂の道具を忘れずに持っていきましょう。
橋を渡ると熊の湯温泉の入り口が見えてきました。もう少し歩くと…。
このような橋があります。奥に見える小屋のようなものが温泉です。秘境感があって良いですね。ちゃんと男女に分かれていますから女性でも安心です。
ちなみにここの温泉には凄く怖い主のような人がいると聞いていたんですよね。
おっかないなあ…と恐る恐る近づいてみたのですが、ちょうど温泉に小さい子供達が入りにきているところでした。そしてその主らしき人がやけどしないように子供たちにぬるま湯か、水かをかけてあげています。
あの人が主か分かりませんが、普通に優しくて良い人って感じ。私が入るときもその方が体洗って入りなーって声をかけてくれました。
子供たちのおかげで少し温度が下がっていて助かったかもしれません。そのままの温度だと私には熱かったかも。でも景色は解放的で、無料とは思えないくらい素晴らしかったですよ。
これから峠をのぼるというのに体が火照ってるのだから何をしてるのだか…。
ちなみに自転車を安定して置いておける場所がなかったので、熊の湯近くの駐車場の手すりに縛り付けておきました。
羅臼側から知床峠を駆け上がる
さあさあ先に進みましょう。
羅臼側の坂の傾斜はウトロ側と比べて急ですが、最初は緩やかな斜面から始まります。
スノーシェッドを抜けていきます。
少しずつ勾配がきつくなっていきます。
車道の表面がでこぼこになっているのが見えますか?これは降雪時の滑り止めなのかな、自転車のタイヤを転がすと思うように進まず減速します(T-T)
荷物が重くてしんどいのなんの。ちょっと休憩と後ろをみたらなかなかの景色だったので写真に収めました。
羅臼側の冒頭ですが、角度的な意味ではここら辺が個人的に一番しんどかったですね。
序盤が苦しいのも何となく表ヤビツを思い出させます。ヤビツ懐かしいなあ、何がどうなって知床峠を走っているのか…(^^;)
ある程度走ると角度は緩やかになっていきますが、まわりは自然で溢れていきます。
ここらまで来ると、もはや道路の角度とかどうでもよく、終始ヒグマに怯えながら登っていきます。
何となく直感ですが、自転車は早朝や夕方は避けた方が良さそうです。昼間は定期的に車やバイクの通りがあるのでまだ…、だからといって大丈夫とはいえませんけどね。
重たい荷物を載せながらえっちらおっちら進んいくと、雲が近づいてきました。峠あるあるですね。
ひざの痛みは不思議と感じません。野付半島あたりから痛みを通り越して無痛状態に突入しています。峠の頂上までいけば何とかなるからそこまではもってくれ。
ふと、後ろを振り返ると…。
自分がのぼってきた道と、これから進む道がみえました。結構のぼったかなと思いましたが、まだまだ山の上に道路があります。
そんな道中、車やバイクには当然ガンガン抜かれるわけです。そして自分がこれから走る道の遥か先にそれら姿が見えると、一瞬、虚無感に襲われペダルを漕ぐのが嫌になります。
愚痴をいっても仕方がないので、自分のペースを維持して少しずつ先に進みます。
のぼればのぼるほど、道路は自然の中です。道路一本に対しての自然の量が半端じゃないですね。そりゃヒグマも出るよな…。
ヒグマも出るというか、自然の中に人間が入れてもらっているんですよね。
のぼっている最中は余裕がないのですが、ふと足をとめて景色をみるとそれはもう絶景ですよ。車のCMに使われそうなくらい自然と道路のみが続きます。
ところで山頂に近づくたびに思ってはいたのですが、どうも雲行きが怪しい。反対のウトロ側や山頂は下手したら降雨があるかも…。
ヤビツ峠でも経験しているのですが、山の天気は急に変わりますからね。雨具はすぐに出せるとこに置いた方がいいですよ。
さっきまでの快晴はどこへやら。山頂手前あたりから急に天気が悪くなって、しまいには濃霧。汗
霧で先が見えないと急に心細くなります。パニック起こすと負けなので平常心を保ちますが、正直、最後の方だけでよかった。
そんな思いをしつつ、峠の頂上あたりまでやってきました。毎度のごとく眺望はのぞめなさそう。涙
トイレがあったので一旦休憩して、駐車スペースをウトロ側に進むと…
知床峠の頂上にある石碑を発見!!よくがんばった自分!
やりきった後だから一言だけ言わせてほしい。
プレシジョントレッキング(プレトレ)重い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
石碑の近くに頂上からみえる景色の説明がありました。晴れていると北方領土が望めるようですが…、霧でなーんも見えません。
観光地で霧が発生するのは今回の旅のお約束。涙
そういえば、トイレの近くにヒグマ注意の張り紙が張ってありました。
遭遇した時、後ろ向きに逃げるのは駄目っていいますけど、実際出会ったら冷静に対処できるのだろうか…。
知床峠のウトロ側を下る
残るは下りだけです。霧も出ているので早々に下山することにしました。
何となく一雨きそうな感じがしたので、カッパを着て、テールライトとランニング用の腕に取り付けるライトを点灯させて出発しました。
ウトロ側は羅臼側と比べて緩やかな傾斜の道路の連続でした。ヤビツ峠でいうところの裏ヤビツですね。
霧がすごかったので一度だけ写真撮影で止まる以外は走り抜けてしまいました。
しかし、濃霧って怖いですね。上りや停止時も心細いですが、個人的に特に嫌なのが下りです。晴れの感覚(スピード)で走ると、目の前に突然、車や動物が飛び出すことがあります。
本当に注意しないとぶつかって大事故です。安全運転。
風を切りながら下ると体が冷えますね。先ほどの温泉効果はどこへやら。
下りの終盤、知床自然センターという施設があったので立ち寄りました。人がいると安心感が半端ない。笑
中で巨大な熊のぬいぐるみと撮影ができますよ。
顔はかわいいのに、爪の凶暴さが妙にリアルなんですよね(^^;)
こけももソフトクリームを見つけたので購入してみました。酸味がきいていて美味しかったです。
霧のなかを走っていて、体が冷えていたのですがはじめてみる味だったのでついつい。
今日はウトロの町に泊まる
知床自然センターを過ぎるとウトロの町はすぐそこです。
国設知床野営場というキャンプ場があるとのことでそこに向かいました。ちなみにウトロの町に着いてから、そのキャンプ場までは激しい上りが1つあります。自転車の方はご覚悟を。
ご飯は先に町で購入しておいた方がいいかと思います。激坂は回避するちょっとした裏道もありますがそれは後述。
気合で激坂をのぼりきり、5分も走らないところに国設知床野営場がありました。
森の中にテントを張るので、雰囲気は抜群に良いですね。世界遺産知床という立地もあってか車のお客さんも多数いて、とても賑わっているキャンプ場です。
知床峠を走っていた時の孤独感はどこへやら。多くの人がいてちょっと安心。
キャンプ場の人にふもとに降りる抜け道があるよーと教わったので行ってみることにしました。行き道にのぼってきた激坂の途中あたりに出ることができます。
草が生い茂っていますが、自転車もぎりぎり通れます。しかし、なんか出そう…。
「ガサガサッ」
クマ!?
よく見ると鹿でした…、びびった…。
この鹿は目と鼻の先なのですが、音がするまで全然分かりませんでした。人間の無力さを感じる…。
それにしても、さっきから四方八方からガサガサッって音がするんですよね。後ろを振り返ると…。
なんかいっぱい出てきた…!このあと前から後ろから多くのシカが登場して、しばらく通せんぼとなりました。汗
鹿でこれだけビビってるのだからヒグマなんて出てきたら…、自然の前に人間は無力ですね。
北海道14日目まとめ
北海道14日目 84.11km走行(積算距離:900.99km) / 全行程16日目(1029.02km)
前半戦の山場である知床峠を無事、攻略しました。
自転車の峠越えは終始、孤独との戦いです。それにくわえて知床はヒグマの遭遇も考えないといけませんから孤独感は限界まで達します。
ヒグマ対策は役に立つのか分かりませんが、(1)音の鳴るものを付けて位置を知らせる(2)早朝、夕方は避ける(3)出会ったら後ろを向いて逃げないなど、基本は押さえて落ち着いて行動したいですね。
ヒグマの恐ろしさはもちろんですが、個人的に感じたのは人の怖さ。
ぶっちゃけ、ウトロ側を下山中、猛スピードの車やバイクにヒヤリとしたのは一度や二度ではありません。
人とヒグマ、本当に怖いのは果たしてどちらやら…なんて考えさせられる知床峠でした。