『北海道海岸線一周(6) 道央編4 -足のけが、しばしの休養-』
ー前回までのあらすじ(前回は【道央編3】霧のえりも岬、恐怖の黄金道路【えりも→大樹】)
北海道道央の海岸線を南下し、えりも町までやってきた3人。起床すると朝から雨に見舞われ、出発するか否かで意見が割れます。
話し合いの結果、私と道の駅スタンプラリーの方は出発することになり、オーストラリア人の旅人は待機となり別れることとなりました。
先をいく2人はえりも岬を通過します。そこは雨と霧の影響もあって幻想的な雰囲気をかもしていました。その後、多数のトンネルがある黄金道路を通過、全長5kmもある黄金トンネルも含めて無事に突破します。
一日中振り続ける雨に体を冷やして苦戦しますが、道中地元の方に「よかったら泊りにおいでよ」とのありがたいお言葉。2人は海岸線を反れやや内陸の大樹町を目指したのでした――
北海道3日目夜…無事家に辿りついた
雨のなか自転車で走り続け、何とか教えてもらった住所に到着しました。
到着と同時に安心したのか、体の力が抜けていく感じがしました。それくらい体の冷えていたんです。1日中雨にうたれていたので寒くて寒くて。カッパも着ていましたが、予想を遥か上にいく厳しさがそこにありました。
家の中に入れてもらって、休んでいると少しずつ体が解凍されていく感じがしました。
夏ですがストーブが置いてあったのが印象的です。その日も炊いてくれたんですよ。その方が言うに「今年は寒いよ」と。
散々寒い寒いと言っていた私の感覚もあながちおおげさではないでしょう?
ここの家に向かう途中、大樹町にあったスーパーで夕食を調達していたのですが、「ジンギスカン食べさせてあげたくて買ってきたぞーー!」なんてとても嬉しいご提案がありました。優しい。
少しずつ体が動けるようになってきたので、みんなで野菜を切ったりして準備を始めます。準備している間に人の出入りがあって誰なのか気になっていたのですが、どうも近所の方々みたいです。
笑ってしまうのは近所の方々がそのまま宴会に参加していることです。これが普通のようで流れに身を任せます。わいわいしてて楽しかったです。
ジンギスカンをご馳走になりました。本格的なものって美味しいですねえ。
子供の頃に北海道旅行で一度だけ食べたことがあるのですが、当時の味はまったく覚えておらず、ほぼほぼ初めましての状態でした。
文章で感想を表すの難しいですね。。ほら、写真のジンギスカン美味しそうでしょ。それが全てですよ。笑
この食事で覚えたのは温かいご飯のありがたみです。温かいものの美味しさを今回の件で身をもってよく学びました。
子供の頃から「体を冷やしてはいけません」なんて口を酸っぱく言われたものですが、これほど辛いものとは。一度冷やすとまず回復しませんね。
今回は仲間がいたから頑張れましたが、一人だと心折れていたかもしれません。基本は一人旅ですから以後気をつけたいと思います。
さて、食事中に風呂あるから入りなーと言ってくれました。食べ物を食べても体の冷えが抜けなかったので先に入れさせてもらうことにしました。
しかし、風呂が見当たらない…?場所を聞くと「外に五右衛門風呂があるぞー!」と。
温泉施設などを除いて五右衛門風呂なんて初めての経験です。ぬるくなったら薪をくべるんだよー!と言われても、何本入れたらいいんだろう…なんて。
でも、温かいお風呂に身を浸して体は完全に回復しました。本当にありがたかったです。
部屋に戻ると宴会の続きです。皆さん例外なくよく飲むし、よく食べます。酪農されている方なんか体ががっちりしていますもんね。プロの体は違います。
楽しい話は尽きませんでしたが、そのなかで
「時間あるなら何日かいたら?」
そんな言葉をかけて頂いたことが凄く嬉しかったです。
北海道4日目…ひざの違和感、まさかの怪我
北海道4日目 (積算距離:260.41km) / 全行程6日目(388.44km)
朝起床すると天候は無事回復していました。しかし…自分の体に違和感を覚えます。
右ひざを痛めた
目を覚ますと寝ている状態で違和感に気がつきます。右ひざに鈍い痛みが走ります。
思い返せば挑戦の連続でした。東京を経ち、フェリーに乗り、重い荷物を載せて100km以上走り、一日中雨に降られ…。
ここにいたるまでに少し無理をしすぎたのかなと思います。
スポーツ自転車を乗られる方は「100km程度なんてなんの…」と思われる方もいると思うのですが、荷物を載せて走ると勝手が全く変わるんですよ。
自転車旅はいかに力をかけずにのんびり距離を走るかがコツだと思うのですが、最初のうちはどうしても力んでしまうんですよね。それに仲間がいたので実力以上に頑張れちゃったというのもあります。
走行ペースの調整や休憩のタイミングは、人と走っているとなかなか難しいものです。それは普段のサイクリングでも同じですよね。今回は自分のペースを確立できず、失敗してしまったなと反省です。
私自身元々ひざが故障しやすい自覚はあったのですが、早々にやらかしてしまった感があります。状態としては足のしびれが酷くて自転車に乗ることが辛い状況です。
お世話になった方に相談をしたら「いいよー休んでいきなー!」とお許しを頂き、甘えることとなりました。
スタンプラリーの方と別れ
私は体を休めるために停滞となりましたが、行きのフェリーで出会ったスタンプラリーの方は長い長い道の駅スタンプラリーの旅に出られます。
「またどこかで会えますかね~。あーでも自分は内陸も行くし、北海道広いからもう無理かなあ」
分かっています。事実上、ここでお別れでしょう。少し雑談をしつつお見送りをします。
この方は実は自転車で日本一周を達成されており、本当に色々なことを知っていました。自転車メンテナンスや宿泊のこと、自転車旅の時間感覚など。
無知な私に色々優しく教えてくれたことは今でも忘れません。
北海道の道の駅スタンプラリー全制覇とは中々ど変態な企画ですが、達成されることを祈っています。本当にありがとうございました。
見送り後、やることがなくなってしまった
さて、自転車に乗れないので休む以外にやることがありません。痛みもあってか自転車の調整も今日はする気になりませんね。
するとサーファーの方が寄ってきて…。
「昨日、海岸線しか走らないって言ってたよな。じゃあ車貸してやるから内陸見てこいよ」
…
……!
…30分後、私は車に乗って帯広を目指していました(免許証持ってきててよかった…)
まさかの車編 北海道の車道はのどかで走りやすい
何故、私は車に乗っているのでしょうか…。
まさか北海道で自動車に乗るとは思ってもいませんでした。準備はしておくものですね。
地理がまったく分かりませんが、近くの大きな街は帯広だと聞かされていたので、そこへ向かうことにします。自転車用に持っていたツーリングマップルで頭に入れつつ、後はナビを頼りに向かうことにしました。
周り一面、畑が広がっているのどかな景色を進みます。途中、トラクターに遭遇しました。道路でトラクターを抜く経験がなかったので、タイミングをはかることが難しかった。
途中、高速道路(帯広広尾自動車道)があるのですが、忠類大樹ICから芽室帯広ICまでの区間が、なんと驚きの無料区間ということで利用してみることに。ありがたい。
帯広まではだいたい60㎞くらいでしょうか。車だと60kmは一瞬ですね、「昨日までの60kmは何だったんだー!」と車の中で叫びます。笑
帯広に到着して街をくるくる回っていたのですが、関東でも見慣れた栄えた街って感じでした。観光はいいかな?と思い、コンビニで休憩してすぐに引き返しました。
帰り道も帯広広尾自動車道を利用したのですが、夕暮れどきだったこともあって景色が綺麗でしたね。
大樹町に戻るつもりが、下りるICを間違えた
帰り道、道を間違えました。
うろ覚えなのですが、1つか2つ手前の中札内ICで降りた気がします。行きに乗ったICの名前を覚えていなくて、降りた後しばらく走ってICを間違えたと気がつきました。
既に日は落ち、傾斜のある細い道を進むのですが知らない道なのでやたら怖い。
ついでに霧がたちこめてきて、えりも岬の恐怖再び…。
対向車はほとんど見当たらないので、ハイビームで先を確認しながら進んでいたのですが、全然見えない。車の中にいるのでクマにこそ襲われませんが、道がとにかく見えにくくて怖かったですね。
実際、写真のような暗さでした。ナビで示す方向に進んでも果てしなくこの風景が続きました。周りの畑の作物の上に霧が立ち込めてこちらに迫ってくるし、とにかく不安を煽られます。
それでもなんとか無事進み、目的地の周辺にたどり着きます。
「目的地周辺です」とナビが終了するのですが、周りを見回すと畑が続きます。昼間ならばみえそうですが、夜だと分からない…というか、濃霧!!笑
何かあったら電話しろよ!と電話番号を知っていましたが、かけても繋がらず。
あ、これは終わったなと思っていたら、車のそばを近所の方が通りかかって家の場所を教えてくれました。助かったー!
お仲間の方と飲まれていた
車をしまって家に戻ると、サーファー仲間の方で飲み会をされていました。これは電話は気がつきませんね。私も風呂を済ませて混ぜてもらうことになりました。
サーフィンしている人の体つきって大きくてたくましいなあって感じます。
たくましい体の人がサーフィンをしているのか、サーフィンをしていてたくましくなったのか分かりませんが、がっちりした体つきはちょっと憧れますね。
自分も北海道一周が終わる頃に少しでもたくましくなっていたらいいな、なんて思いながらお酒を頂きます。
足の痛みを忘れらるような素敵な一日となりました。
北海道4日目 0km走行(積算距離:260.41km) / 全行程6日目(388.44km)
北海道5日目…自転車の修理をする
北海道5日目 (積算距離:260.41km) / 全行程7日目(388.44km)
痛みがひかない
5日目になりました。右ひざはなかなか改善の兆しがみえません。
履くタイプの簡易的なサポーターは所持していたのですが、締め付けが緩めでがっちり固定されず痛みの緩和にはあまり効果があるような感じがしませんでした。
ちゃんと固定できるもの、一本持っていないと駄目ですね。
この日も自転車の走行が辛かったのでお休みとなりました。そこで道央を進むときに気になっていた自転車のシフター周りの不調箇所を修理をすることに。
自転車の調子をゆっくり見られるのは、関東の自宅を出てからはじめてのことです。それまでは前に進むことに必死で余裕がなかったんですよね。
自転車の修理に精を出す
不調内容は変速がうまくいかない、ということで前と後ろのディレイラー調整を行いました。
リアディレイラーはアジャスターを回すことで簡単に直りました。しかし、フロント3段の調整に苦戦します。
そもそも私の自転車(プレシジョントレッキング)は元々シングルギア構成でした。そこにやれフロントギア多段化だ、やれドロップハンドルだ、STIレバーだとめちゃくちゃやっています。
細かい部品を付ければ付けるほど、原因の特定が面倒になります。こういう改良の副産物的なものとして動きがもさもさしている可能性もあるのですよね。しっくりくるセッティングがうまくいきません。
自転車旅はシンプル構成、かつ破損部品が入手しやすいことが一番ですね。
そんな自転車道の悟りを開きつつ(笑)フロントディレイラーの可動域を再調整してケーブルを張り直したら、それっぽくはなったのでとりあえずOKとしました。
ちなみに私のフロントディレイラーはトリプル構成です。でも、ここまでの旅路で主に使ったのはインナーとミドルがメインでした。今後も不調が出るようならばアウターは捨てて、2枚(ダブル)設定にしまおうと考えました。
せっかくなので、自転車が直ったか試走をしてみましょう。
まずは家の周りで試走をしてみます。体が本調子ではないので、荷物はすべて置かせてもらいました。
一面が畑、どこまでも果てしなく畑です。美しくのどかで良いところです。延々とこの風景が続くんですよ。圧巻です。
試走途中にキキョウが咲いているのを発見。背が高いので切り花用でしょうか。
しかし、本州では5、6月に咲いていそうなものですが、北海道の涼しさと、今年の冷夏の影響で開花が抑制的に働いているのでしょうね。
花の形状にも色々あったんですよ。キキョウの花弁は通常5枚咲きが基本ですが”6枚咲き”だったり”ダブル咲き”だったり、いろんなタイプが混じっていてとても興味深かったです。
私はこういうちょっとした草花を観察するのが好きなので、心行くまで楽しませてもらいました。北海道入って初めてこんなにのんびり花の観察をできたのは初めてかもしれません。
また飲み会に混ぜてもらった
さて、家に帰ってくると今日もサーファーのお仲間がくるとのことで食事の準備を手伝います。そしてそのまま飲み会に混ぜてもらいました。
準備を手伝った流れで連日飲み会に混ぜて頂いています。嬉しいやら気が引けるやらなのですが、ここは図々しく「頂きます!笑」
この夜は、サーファー仲間の方が主なようで、会話の中心はサーフィンでした。この日出会った人全員に、話しかけられもれなく全員に
「お前自転車旅もいいけどさ、サーフィンやれよ、人生変わるぞ!!」
なんて勧められたのが今でも強く印象に残っています。皆さんとにかく楽しそうに話されるので、それだけで興味惹かれるんですよね。
お仲間の一人で、飲食店を経営されている方が美味しいお肉を食べさせてくれました。柔らかさ、味、今まで食べたことのない衝撃的な美味しさでした。ありがとうございます。
相変わらず文章表現に乏しいですが、写真で補完して下さい。笑
しかし、衝撃的な美味しさでした。何かに精通しているって憧れます。
北海道5日目 9.55km走行(積算距離:269.96km) / 全行程7日目(397.99km)
北海道6日目…最後の休息
北海道6日目 (積算距離:269.96km) / 全行程8日目(397.99km)
痛みの改善がみられ、明日の出発を決める
このおうちにお世話になるのも4日目です。
少しずつ足が良くなっているかな、という感じがします。大事をとって今日1日休み、明日出発することになりました。
その日は家の掃除の手伝いなどをしました。夕方から五右衛門風呂のたき方を教わったのですが、薪に火をつけるのが難しくて苦戦。
何とか着火。火を見ているとなんだか落ち着きませんか?しばらく眺めていました。
この後、火と水の加減を間違えて強烈な熱湯風呂を作り上げてしまうという。自分って何もできないなあって強く思いましたよ。
ちなみに最後の日は家主のサーファーの方と二人でした。
実はこの方、若いころに世界中を自転車で回っていた経験者です。今回の旅はそういう人に縁がありますね。笑
そんな経験者の方が、私の自転車(プレトレ)を細かいところまでチェックしてくれました。趣味のスポ―ツ自転車乗りとは着眼点が異なっていて面白いですね。
一通り見終わると、私の自転車(プレトレ)のことを、自転車旅に向けて考えて作っているねと褒めて下さった言葉が嬉しくて今でも忘れません。
プレトレだって北海道海岸線一周出来るはずです。私はそれを信じています。
北海道でまさかのプレトレ改良
自転車のことで嬉しい話はまだ続きます。
以前、STIレバーを取り付けるためにカゴの一部を切ったのですが、切り口が少し甘くてとげとげしていました。レジ袋をひっかけると破れます。
それを見るやいなや工具を持ち出して綺麗に切断して下さいました。その後、やすりを借りて切り口を整えます。これでレジ袋などが破けるようなことはなくなりそうです。
しかし、工具や何から何でも揃っていて、夢のような場所でした。
北海道の旅の中で、まさかカゴの一部を切断するとは思いもしませんでした。笑
最後の夜は静かに過ぎる
最後の夜です。この日は他の人がいなくて2人でした。
私はこの日はじめて自分自身、自転車のことをサーファーの方にいろいろと話したのでした。
逆にサーファーの方の世界自転車旅の話も教えて貰いました。これは日本では想像がつかないくらい刺激が強い話でしたね。身を守るための拳銃の話とか平気で出てきますから。
自分はなんて小さい世界で生きてきたのだろうと思い知らされます。でも、何事は小さな一歩から…です。比べても仕方ありません。
次の日朝会えるか分からなかったので、お世話になったお礼をいって就寝しました。
まとめ
北海道6日目 0km走行(積算距離:269.96km) / 全行程8日目(397.99km)
今回は足の怪我もあり、休養中の話が中心でした。
しかし、そこで過ぎた日々は決して無駄ではなく、むしろ有意義だったと思います。現地の方々との話も勉強になりましたし、何より自分の気持ちがリセットされました。
今回、私たちを助けれてくれた方との出会いは、私の人生観を大きく変えるきっかけとなったことは間違いありません。広い世界を知る人でした。
私が設定した「北海道の海岸線を反時計回りで一周するぞ」という目標は、その方と比べてしまうととても小さなものです。
しかし、私にとって大きな一歩を踏み出したことは間違いありません。自分が決めたことを確実に達成するんだという強い気持ちに変わりました。
東京を飛び出してまだ日は経ったいませんが、今思えばこの頃から目的意識が変わったなと感じています。少しずつ、前を向くようになりましたね。