『北海道海岸線一周(5) 道央編3 -霧のえりも岬、恐怖の黄金道路-』
ー前回までのあらすじ(前回は【道央編2】えりもを目指してひたすら南下【むかわ→えりも】)
北海道の海岸線一周を苫小牧港より反時計回りで海岸線1周と設定し、移動を開始しました。フェリーで一緒だった方、途中で知り合った外国人の3人なので心強いです。
前回はむから町からえりも町まで131.27kmを走破。荷物が重いので、普段の130kmとはわけが違います。
道中、新冠に寄り名産であるピーマンを使用したピーマンソフトを食べたりもしつつ、夕方頃えりもの町に到着。明日はえりも岬へ向かうため、寝床に入るのでした――
北海道3日目…えりも岬到達後、北上を開始
北海道3日目(170.04km) / 全行程5日目(298.07km)
夜明けとともに起床します。
普段は夜型の私ですが、自転車旅をしていると朝早く起きる習慣がつきますね。食べるか走るくらいしかやることないからでしょうか。スマホも壊れて封じられていますし。汗
基本的に日の出ているうちしか走れませんから、早めに起きて有意義に時間を使うことは間違いではなさそうですね。
雨が降り、意見が割れる
起きたときから分かっていたことなのですが、この日は雨でした。
ここで意見が割れました。外国人の方は雨は走りたくない。道の駅スタンプラリーの方は雨でも走る。自分は雨でも走る準備をしていたので走るに1票でした。
ちなみに私が使用しているレインスーツについては、私が自転車旅で使用するレインウェアと管理法についてに記してあります。
外国人の方とスタンプラリーの方が両極端で意見だったので、話がまとまることはなさそうでした。自分は意見なんてなくて、楽しそうならなんでもいいので、北海道の雨も経験してみるか!くらいのものです。汗
最終的に外国人の方は残るということで話のケリがつきました。雨が上がったら追いかけるよとも。まあ私は海岸線一周してるだけですから会うこともあるかもしれません。
北海道入りして独りになってから初めて声をかけてくれた方だったので、どうしても寂しい気持ちがありますね。
ただ、別れはいつかくるもの、そして別れがあればまた新たな出会いもあるはずなんです。出会ってくれてありがとう。
えりも岬を目指すも…寒い!!!
スタンプラリーの方と一緒に、えりも岬に向かって走り出します。
吹き込むような強い雨で視界が非常に悪いです。重たい荷物で自転車がふられると滑って危険なので、慎重に進みます。
それにしても寒い。寒さは茨城県の大洗にいたときから感じていましたが、雨ということもありこの日は顕著。後々知ったのですが、この年は冷夏だったようですね。
手先が冷え、体が冷え、私は苦しめられることになります。
えりも岬の霧の中をゆく
自転車で岬に行くって生まれてはじめての経験かもしれません。
岬って高低差が結構あるんですよね。岬の先まで平坦かと思ってなめていました。笑
えりも岬の周辺は雨のせいで濃い霧が発生していました。車もほとんど通らないので、不気味なほど静かです。私たち2台の自転車が濃霧のなかを粛々と進みます。
自転車の音と、雨の音と、それ以外は静寂そのもの。視界の悪い霧もあって異世界にでもきた気分ですね。
時間が止まったような不思議な感覚がありました。
ふと、10mないくらいのところを大型の動物が横切りました。オスのシカです。雄シカは優雅なものでした。でも、いきなり出てきたので怖かった…。
霧の中を必死に抜けていくとえりも岬がみえてきます。
そういえば道中、ホクレンのライダー用フラッグ(黄)が落ちていたので拾いました。
これはホクレンSSという北海道のガソリンスタンドがバイクの給油時に販売するフラッグです。地域によって色が異なって全4種類です。
バイクの後部に付けて走っている方をよく見かけます。バイクの速度的に飛ばされて落ちちゃうんでしょうね。わりと落ちています。笑
霧の中を抜けて、えりも岬に到着
静かな道路をひたすら進むとえりも岬に到着しました。
写真のような碑?って映像とかネットでは見かけますが、自分の目で見てみると感動が段違いですね。周りがどうなっているかも隅々までみることができますし。
雨がとにかく酷くて暗い写真になってしまいました。
えりも岬の先端から海を見下ろした光景です。
結構高いところでしょう??
岬は平坦なところにあると私が考え、それが間違っていたということがよく分かりますね。峠とはいいませんが、実際かなりのぼります。
ところで、えりも岬周辺はゼニガタアザラシがみられるそうですよ。併設されている施設に双眼鏡が置いてあるようです。有料+悪天候だったので入りませんでしたが…。
>>襟裳岬 風の館
お土産屋があったので、北海道キャラメルを買ってみました。王道お土産なのでどこで売っていますが(笑)走行中に食べると美味しくてちょっと幸せな気分になりますね。
えりも岬を攻略し、道東へ向かって北上する
非常に長いと噂のトンネルがあると聞いた
さて、えりも岬を攻略したので、あとはひたすら北上を開始します。
北上にあたって1つ気がかりな場所がありました。それは黄金道路と呼ばれるところです。
黄金道路には9個のトンネルが並べられています。そしてそのうちの1つ、えりも黄金トンネルは全長約5kmもある驚異的な長さです。内心ドン引き…。
他にも2kmクラスが地味に2つもあります。2kmだって普段生活していて見ないですよねえ。
トンネル通過を苦手としている私は、気がかりで仕方ないのでした。
えっちらおっちら2人で進んでいると黄金道路の入り口らしき看板がみえてきました。
「これより黄金道路」
疑いようがないですね。黄金道路に到着です。看板のすぐ横に展望スペースのようなところがあったので入ってみることに。
しっかりとした石碑が飾られていました。
ここは遮るものがなくて、晴れていたら見晴らしがよさそうですね。でも、この日の天気は酷い雨。写真はこの先9個のトンネルを抜けなければならないという私のどんよりとした気持ちを的確に表していると思います。笑
最初は短めのトンネルを進むのですが、いかんせん雨で道が滑りやすくなっているので細心の注意を払います。
黄金道路にはこのようなスノーシェッドが何か所も登場します。雪国ならではの雪崩れ対策。内部を写真で収めてみるとなかなか絵になります。
道路の横を小さな滝が流れていることが多々あります。ここの黄金道路に限らず、北海道全域の海岸線で見かけました。
普段、なかなか見ない風景でついつい足を止めてしまいます。滝の音ってなんだか癒されませんか?
全長5kmにもおよぶ噂のえりも黄金トンネルへ
さて、いくつかトンネルを越え、えりも黄金トンネルに到着しました。
しかし、トンネルは工事中で道路の片側が塞がれていました。これは対向車にも気を遣わないといけない難易度アップパターンか…?
トンネル手前に辿りつくと、交通整理をしている工事の方が寄ってきて下さって…。
「自転車だったら工事しているレーンで走っていいよー」
と誘導してくれました。これはラッキー!!
これで車に怯えることなく、この5kmのトンネルは楽勝攻略だな、ふふふ。なんて思っていたのですが、1kmもいかないところで工事は終了。通常の左車線に戻されます。笑
ここから先がもう長くて長くて。
後ろの方からトラックの音が反響して近づいてくるのが怖いんですよね。そろそろ車来るかな?って後ろを見ても見当たらなくて、油断していると物凄く近くにいての繰り返し。
非常に気を遣うので、神経がすり減ります。トンネル内部は自転車の逃げ場が少ないので、平坦や峠の5kmともまったく違う感じですね。とにかく長く感じます。
トンネル通過の際は、テールライトやランニングライトをうまく活用して自分の位置を車に知らせて下さいね(参考記事:自転車旅で使えた照明道具のまとめ)
それとトンネル内は涼しい風が通って寒いんですよ。カッパを着ているとはいえ、雨で冷えた体には小さなパンチが打ちこまれ続けます。
こんな時、スタンプラリーの方がいてくれて良かったと思います。1人で黄金道路を通過するのは心細かったと思います。
運命の出会いは突然に
トンネルを抜けて、広尾の周辺を走っていると私に疲れの色が見え始めます。
度重なるトンネル地獄と雨、寒さの影響ですね。仕方ないので1人速度を落として走っていました。
すると少し先を走っていたスタンプラリーの方が自転車を止めて人と話しているのが見えました。
追いついて、挨拶をするとしばらく雑談がありました。その方は海でサーフィンを楽しまれていたようです。
会話のなかで「今日どこに泊まるの?」という話になり、道は違えど2人ともまだ決めてないですという話をすると「よかったらうちにきなよ」というありがたいお話を頂きました。
「その場で決めなくていいから気が向いたらおいでー」と住所だけ教えて下さってその場は解散になりました。場所が内陸寄りだったので私は迷っていました。
スタンプラリーの方ともう少し話したい気持ちもありましたし、別れの後の新しい出会いでもあったので大切にしたい気もしました。
私は一旦、海岸線を進むことを中断して、内陸方面(大樹町)に進むことに決めたのでした。
広尾の街で休憩して最後のひと頑張り
広尾の町にセイコーマートがあったので休憩します。このパスタが100円とは恐れ入ります…。
その場で温めてもらえるので、ありがたいですね。しかし、いくら温かい食べ物を食べても体が寒くて寒くて。
私の人生の中でもっとも寒さで苦しんだ日と思います。体の芯まで冷え切ってしまい生きている心地がしませんでした。教えて頂いた住所までしばらくありましたが、たどり着けるか正直、自信がなかったですね。
でも仲間もいるし、一人でいるよりいいだろうと奮い立たせます。
広尾から大樹町はまっすぐの道をひたすら進みます。1本道なので行先を間違うことはありませんが、果てのない空間を永遠と走らされているような不思議な気分です。
サーファーの方は家はすぐそこだよーと仰っていましたが、北海道の方のすぐそこは30、40kmとかざらなので信用なりません。笑
私のすぐそこという感覚は池袋、大塚間、新宿、代々木感だとかそういう尺度ですからね。いかに狭い世界で生きてきたかを思い知らされます。
話は変わりますが、広尾はししゃもが美味しいですよ。立ち寄ることがあればぜひぜひ。
激しく消耗しつつも大樹町に到着
まずはスタンプラリーの方についていって道の駅に寄ります。隣にスーパーもあったので食べ物の買い出しも済ませます。
ちなみに大樹町の道の駅はこのような休憩スペースがありました。
道の駅は休憩スペースがあるところが多いので、上手に活用したいですね。
少し休憩しつつ、道の駅から声をかけて下さった方の家まで最後の一走りをします。体の冷えは治ることがなくて、最後は気合。火事場の馬鹿力ってよくいったものだと思います。
教えて頂いた住所に辿りつくと、声をかけて下さった方が暖かく迎えて下さるのでした。
あの時の「もう大丈夫だ、助かった…」という感じは旅を終えた今でもよく覚えています。
まとめ
北海道3日目 90.37km走行(積算距離:260.41km) / 全行程6日目(388.44km)
えりもの町から大樹町まで、極寒の雨のなか90km走りました。1人じゃ絶対に心折れていたと思うのですが、人(経験者)と一緒に走ると頑張れますね。
えりも岬は雨、霧の天候も味方して幻想的な雰囲気をかもしていました。北海道一周のなかでも強く記憶に残っている場所の1つです。
北上にあたって立ちはだかった黄金道路と呼ばれる無限トンネル地獄は、トンネル嫌いな私にスパルタ教育を施しましたね。おかげでほんの少しだけ自信がついた気がします。
一旦内陸に入ることにしたので、オーストラリアの方とは合流できそうもなく、もやっとしたものを残しましたが、サーファーの方との新しい出会いもありましたね。
出会いと別れを繰り返す、それもまた旅の醍醐味の1つなのかな。
次回は大樹町到着後の夜から話を再開します。