『北海道海岸線一周(13) 道東編5 -強風!野付半島の戦い【厚床→標津】-』
ー前回までのあらすじ(前回は【道東編4】厚床へ。牧場の横でキャンプをしよう!)
根室を出発し、厚床近くの牧場キャンプ場まで向かいました。
道東編始まりの頃に再発した右ひざの痛みが日に日に悪化します。根室を出発した前回は上り坂を漕ぐことが出来なくなり、押して歩くようになりました。その日は40kmほど進んだ厚床でギブアップ。
厚床のコンビニで休憩していると、バイク乗りの青年と知り合いました。「近くにキャンプ場があるから、よかったら一緒に行きましょうよ」という嬉しい提案を受け、力をひねり出して少し先の築拓キャンプ場に向かいます。
このキャンプ場は牧場に併設されたとても静かな場所で、体を休ませるには好適な場所でした。バイク乗りの青年と飲み明かしたことで、良い気分転換になり、怪我の傷みで沈んでいた心が、少しだけ癒えた感じがしました――
北海道13日目…力の限りオホーツク海を北上する
牧場で迎える朝はさわやかですね。
ひざの痛みは変わらずか、ほんの少しはいいかな…?でも、一日酷使したらまた痛むでしょうから一喜一憂はしないことにします。日も改まったことですし、前進あるのみです。
バイク乗りの方は私が起きた頃には出発し、老夫婦の方はまだいらっしゃったので挨拶をして出発することとしました。
老夫婦の行先は、標津→知床その後北上と私と似たような経路だったので、またどこかで会うかもしれませんね。
標津方面を目指すため北上開始
国道243号線をのんびりの走ります。平地が多くて助かりました。これならひざが痛くてもまあまあ進めるかな…?
天気が良かったので、緑と水のコントラストが美しいですね。
自然多めな道路を走っていると、今走っている国道243号と国道244号に分かれる分岐点に差し掛かります。
そのまま国道243号を進むと内陸の別海町、国道244号を進むと海岸線に出ることができます。私が目指しているのは海岸線なので、国道244号に外れました。
こちらが国道244号です。真横に海があってまさにThe 海岸線といったところ。
天気も良くて、穏やかで、ひざの痛みを忘れるくらい快適な道路ですね。
…そう見えるでしょ?
実はここでは強烈な向かい風を喰らっており、押し返されている最中です。涙
海の強風って怖いですよ。ペダルを踏み込まないと進まないばかりか、自転車がふられて倒れそうになります。強風に堪えるのにペダルに力を入れるだけでも右ひざに相当な負担です。
追い打ちをかけるように熊出没注意の看板が。時速10kmも出せていないわけで、熊が出てきたら、逃げ場ない…よなあ。
出没頻度が高いのは朝、夕方などあるのでしょうが、野生動物に絶対はないですからね。とりあえず自転車のベル鳴らしと歌で、アピールはしておきます。
向かい風の影響も受けて疲労の蓄積が早い感じがしました。ひざの調子も考えて、目標物が見えたらこまめに休憩を挟むことにします。
「別海10景 白鳥台」の看板を発見しました。
ここは大きなパーキングもあって、道の駅「おだいとう」が併設されています。
見えていた建物は道の駅だったのですね。せっかくなのでここで休憩することにします。
建物のなかで、雪みつソフトクリームを発見。
雪みつとは”別海町でホエイに砂糖とレモン果汁をくわえた練乳でもはちみつでもない新しいシロップです”とあります。
気になったので購入してみました。パッと見、ただのソフトクリームかと思いきや、ちゃんと蜜がかかっていました。
味はまず蜜の甘みがはっきりと伝わってきます。その分、ミルクソフトの甘みは控えめにしてあるような感じがして、少し物足りない。個人的には王道のミルクソフトが好きかな。
道の駅おだいとうの駐車スペースです。そこまで大きな道の駅ではありませんが、結構な数の車が止まっていますね。
この車を見ていて、正直「車はいいよなあ、足の怪我なんて関係ないし」なんて思ったり。自転車移動と比べると移動距離は長いし、天候も大半無視できるし、煽られることもないし。笑
足の怪我が真っ只中の現状では愚痴の一つもこぼれますが、自転車旅を通して車という道具の良さに改めて気がつけたともいえそうです。煽りは駄目だけどね。
そういえば、良い天気が続いていたこともあってか、自転車のリアキャリアで服を干しだしました。これをやり始めると貧乏くささが一気に上がりますね。
でも、風を受け、太陽を受け、乾きが早くて癖になります。
尾岱沼(おだいとう)周辺で悟った
相変わらず強風に襲われ、ひざの消耗がいつもに増して激しいです。
道の駅おだいとうの少し先にある尾岱沼(おだいとう)の町があります。そこにあるキャンプ場で終わりにしようかなと考えました。
しかし、尾岱沼に差しかかったあたりで、急に右ひざの痛みが消えます。どうも痛みの頂点を越えたのか、無痛状態になりました。痛みも頂点を通り越すと何も感じなくなる…のかな?
ろくなもんじゃないと思うのですが、時間的にはもう1つ先の標津(しべつ)に向かえそうだったので、行ってみることにしました。
とりあえず休憩を兼ねて、尾岱沼のセイコーマートでモンスターを購入して、ドーピングを重ねます。
この手の飲料は意味があるのかないのか。でも、モンスター飲んだし大丈夫だろうって無駄な自信は湧いてくるから不思議なものです。おまじない料と思えば。
延長戦の末の地獄「野付半島」
延長戦を決め込んで、標津の街を目指すことにしたのですが、この選択が私にとって大きなトラップになるとは。
実は国道244号から北上を続けると、士別の手前からオホーツク海側に伸びる海岸線があります。その名も野付半島。
海岸線ルールを張る者をすべて飲み込む魔の半島。ちなみに全長約26km。往復約50kmって今日走った距離より長いんじゃ…。、
そういうこと冷静に考えていると、先ほど飲んだモンスターのドーピング成分が抜けていく感じが。ああ、もったいない。
この野付半島の道路は、一応道道950号という名前が付いているみたいです。でも、見るからに何もなさそう。観光スポットとかそういう意味じゃなくて、風から守ってくれる建物的な意味で。
今日1日の感じからして、風に襲われること確定だろうな。でもやるしかない、折れるな自分の心よ。
この日ほど、海岸線一周ルールを張ったお馬鹿を恨んだことはない。この記事書いてるお前だよ。
野付半島攻略戦
というわけで国道244号を右折し、野付半島攻略戦を開始します。時間的には余裕がありますが、右ひざの痛みがまた出始めたら面倒だな、とその点だけ気がかり。
道中は本当に何もありませんでした。右を見りゃ野付湾、左見りゃオホーツク海。遮るものが一切ないので、風が吹き抜けて気持ちがよ…前に進みません。
天気がよかったのが救いですかね。風を受け続けても寒いと感じることはありませんでした。
オホーツク海をバックに写真をぱしゃり。オホーツクの海ってエメラルドグリーンのような色をしているなって気がつきました。太平洋とはまた違った色味です。
ちなみに写真の背後に雲がかかった山々がみえます。あれは前半戦最大の山場と思われる、知床の山です。野付半島から見ていてもその迫力は十分でした。
道道950号の道を進みます。建物どころか木すらろくに生えていません。これを延々と26kmです。
時間が止まっているんじゃないかという気にさせられますが、先ほどまで滞在していた別海町の看板(半島を南下したことで戻ってきた)が見えたことで我に返ります。
せっかく北上したのに!!!
自転車乗りには良い感覚で休憩スペースが点在しています。半島内側(北海道本島側)は木が生えていますが、手前は枯れ木。海風でやられちゃうのかな。
ここが何km地点なのか不明ですが、たまに風が穏やかになるので、その隙に進みます。
半島の先端側に、野付半島ネイチャーセンターという場所があります。近くに石碑があるので記念撮影をしました。
半島内の唯一の観光スポットなのですが、もう少し先まで道が続いているのでひとまず海岸線ルールを果たしに向かいます。
自転車で進むことができる限界点まで到達しました。もう本当に何もありません。
今回みたいに海岸線の限界を辿っていれば通行止めということもあるわけです。そこに達したときの達成感と、来た道を戻ることの虚無感。
北海道海岸線一周を果たした先に何があるのか(遠い目)
帰り道キツネがいましたが、私のこと見向きもしません。
エキノコックスという病気の話を聞くと近づきたくはありませんが、まったく見向きもされないと悲しくなるのは人間の悲しい性というか。キツネ相手に孤独を感じる始末。
ふと野付半島側を見てみると大きな物体が見えました。目を凝らしてみると鹿が沢山います。雄雌が群れていたのですが、こちらを警戒しています。
ここでふと気がついたのは、見渡す限り人の手が入っていない風景でこれが中々圧巻ということ。どこかもののけ姫の1シーンのような。
そういえば、北太平洋シーサイドラインを走っている時も鹿がこちらを警戒していましたよね。草食動物って相当広いところまで見えて(聞こえて)いるんだろうなというのを感じましたね。
さて、ネイチャーセンターまで戻ってきて休憩します。
野付半島はトドワラというのが有名ようです。トドマツが立ち枯れたものをトドワラというそうですが、それを見に行くためにはネイチャーセンターから徒歩か写真のトドワラ号(有料)に乗るの2択のようです。
右ひざの調子もあったのですが、自分の中でワクワクするものがなくて、直感で行くのをやめてしまいました。
私のための救済措置か、ネイチャーセンターの前に模型?のようなものが置いてあったのでそれで満足。笑
このワクワク感を私は大事にしています。旅って大体は皆同じようなルートを辿ると思うんですよね。”そこで”、”そこに至るまでに”何を感じるかというのが大切と思っています。
だから、自分のなかでワクワクしないなと思ったら、行かないという選択肢もありなんじゃないかな。私が守るのは海岸線ルールだけで後は自由です。
帰りも26kmあるので、気合を入れて自転車を漕ぎます。太陽が少しずつ落ちてきて、野付湾側が輝きます。
圧倒的な自然の美しさを伝えたいのですが、見事に電線を写してしまうのは私の生活感のある写真センスのたまものです。
ほら、こっちの写真は上手に撮れたでしょ。
野付湾側ですが、大きな川(淡水)にしかみえませんが、海水が流れ込んでいるんですよね。その淡水と海水のせめぎ合いで、トドマツとかの木が枯れちゃって立ち枯れが起きるって書いてあったかな。
頭で理解しているつもりでも、見た目は川にしかみえなくて、こんがらがります。ところでふと頭上を見上げると…。
???「エヴァシリーズ、完成していたの?」
あのシーンを思わせるか、いやそれ以上に飛んでいますが(笑)これだけ数がいると異様です。浦幌のキャンプ場でも食パンを盗られましたし、なんかおっかねえな…と。
鳥の群れを見て思い出すのは、昔、『鳥』という映画(アルフレッド・ヒッチコック監督)がありまして。いや、これ以上はやめておきます。笑
ちょっと脱線しましたが、日が暮れる前に無事国道244号前に戻ってこられました。
看板には知床峠のおひざ元の斜里(しゃり)、そして知床峠を越えた先にある羅臼(らうす)の文字がみえますが、今日は標津(しべつ)という町まで行くことにします。
しべつ海の公園オートキャンプ場にやってきました。近くで釣りをするスポットがあるようで、車で来た人たちが荷物の出し入れをしているのをみていいなあ~なんて。
このキャンプ場は風が強烈で、テントを張るのに苦労しました。今まではペグを張らないで楽して済ませるパターンが多かったのですが、今回ばかりは海の彼方へ吹き飛ぶので必須。自転車も倒します。
北海道海岸線一周ともなると道中色んなところでテントを張るので、スキルが上がって良いですね。
1日の最後はお風呂ということで、公衆浴場くすのきにやってきました。
ここで厚床の牧場で知り合ったキャンピングカーの老夫婦の方と偶然再会!
野付半島行きながらここまできたと言ったら「私たちと同じ距離じゃない。よくやるねえ」って笑ってました。笑って頂けると頑張った甲斐があったというものです。
風呂に入っていると、遅れて右ひざの痛みがやってきます。やっぱり治ったわけではなかったんだな。
北海道13日目まとめ
北海道13日目 99.55km走行(積算距離:816.88km) / 全行程15日目(944.91km)
標津の町まで進むことが出来ました。
野付半島を含め終日風と戦う1日でしたね。風というのは馬鹿にならなくて、追い風ならば自転車はすいすいと進むのですが、向かい風だと歩いた方が早いんじゃないかというくらい進みません。
海岸線は風の影響をもろに受けるルートなので、思ったより進めないなんて日も今後出てくるかもしれないなと感じました。無理のない予定設定が大事ですね。
さて、野付半島を走っていて知床半島が姿を現しました。ここが前半戦の山場でしょう、決戦の日は近い…!