『北海道海岸線一周(10) 道東編2 -根室まで続く坂の地獄に苦しめられて-』
ー前回までのあらすじ(前回は【道東編1】北太平洋シーサイドライン攻略戦【釧路→霧多布】)
釧路を出発して北太平洋シーサイドラインに入りました。
太平洋シーサイドラインは見晴らしのよい景色が続きますが、ときに急激なときに緩急を繰り返す坂道の連続でゴリゴリと体力を削られます。
道央でひざを壊して以来、負担の少ない走りを意識するようになりますが、数日では到底習得まで至らず、道路にペースを取られがち。
消耗は激しかったものの、厚岸(あっけし)の町を通過、湿地帯を抜けて霧多布岬(きりたっぷ)まで進みます――
北海道10日目…霧多布岬から根室の町を目指す
霧多布岬の先端まで散歩をしてみる
朝、起床してテントのジップを開けてみると、一面は霧に包まれていました。昨日夕方到着時の方が周りがみえていたような。名前に霧ってあるだけに、こういうこと多いのかな。
霧多布キャンプ場の近くに霧多布岬の先端があるようです。キャンプ場に自転車を置いて徒歩で行ってみることにしました。
道中の様子ですが、結構霧が凄いでしょう。日が出ているうちはいいのですが、夜は視界がものすごく悪くなるので恐怖でしかないです。
この先に灯台や岬の先端があるので、引き続き歩いてみます。
霧多布岬は映画「ハナミズキ」の撮影場所になったそうです。
新垣結衣さん、生田斗真さんが出演されていたそうですが、皆さんご覧になりました?自分はまったく知りませんでした。
こういうのちょこちょこ知ってるとまた違った景色がみえるのだろうなあ。
さらに進むと灯台が現れました。
最近まで灯台って何の意味があるんだろうなあ、なんて思っていました。色々あるのでしょうが、その1つに灯台が発する光で、海にいる船に陸の位置を示すという目的があるんですよね。
船の目線で考えたら、真夜中の日本大陸なんて何もみえないし、下手したらぶつかってしまいます。灯台の光は大事です。
つくづく自分って何も知らない、出来ないなと思い知る旅を続けています(笑)しかし、そんなのは分かりきったことで、無知、出来ないを素直に認め、吸収しようとすることが大事ですよね。
ところで花が咲いていたのでいくつか紹介します。
これはトウゲブキかな…?時期が過ぎていたのか花弁が少し落ちて判別しづらい。
エゾフウロの花です。
繊細な淡いピンク色が岬に栄えますね。この色は好きだなあ。
ちょっと分からなくて今調べ中。
最初見たとき「ニラ…?」って思ったのですが、葉の形状が違いますね。笑
ツリガネニンジン…かなあ?
ツリガネニンジンってもっとぽつらぽつらと咲いているイメージがありましたが、随分と群れていますね。栄養条件がいいのかな。
花の観察をしながら先に進むと「きりたっぷ岬」と書かれた碑がありました。自転車がなかったので、リュックサック置いてぱしゃり。
霧多布岬って運が良いとアザラシがみえるらしいですよ。動物が好きなので楽しみにしていたのですが、この霧ではね…えりも岬でも見られなかったし残念極まりない。
しかし、今回の海岸線一周旅は名所や見晴らしのよいところで天候に恵まれないことが多いですね。日頃の行いでしょうか。
そんなことを考えながらしばらく滞在していたのですが、霧が晴れる気配はまったくありません。仕方ないのでキャンプ場に戻って朝食を食べ、出発することにしました。
霧多布を出発、北太平洋シーサイドライン再び
よくよく周りを見てみると昆布漁が盛んなようで、あちこちに昆布を干している風景がみられました。昨日は夕暮れ時にきたので、見落としていましたね。
霧多布を出て道道142号を進みます。近くを通る国道44号と比べると穏やかな道です。
少し行くと、「シカ注意」の文字がありました。道路に器用に書いたなあって感心しました。”意”の文字って結構難しくないですかね。笑
道なりに走っていると分岐点が現れました。左折して国道44号線で別海方面に行くか、直進して道道142号線で初田牛に行くか決めなければなりません。
海岸線ルールが発動するので、迷うことなく直進道道142号線の初田牛行きです。
国道を蹴ったわけですから、道道142号線が静かなところというのは何となく分かって頂けるのではないかと思います。
車も少ないし、自然も多いしでちょっと何か出そうで怖いんですよね。
「ガサガサッ」
って音がしたので後ろを向いたらキタキツネがいました。
木々の中を抜けて走ると開けた湿原で出ました。
これがまた広大でして、延々と平べったい湿原の風景を進むので、自分が進んでいる感覚がなくなる、時が止まったような不思議な感覚を味わいました。
ここを抜けるとまた少しずつ緩急のある坂が始まりました。
途中、羨古丹駐車公園という場所があったので休憩をします。
休憩中、右のひざにピリッと痛みを感じ始めます。昨日のシーサイドラインは右ひざに相当ダメージがいったと思います。
忘れた頃に「北太平洋シーサイドライン」の看板が現れます。少し前に「昨日のシーサイドラインは…」と書きましたが、実はここもシーサイドラインです。笑
海岸線ルールを張る以上、シーサイドラインからは逃げられません。戦うしかない。
ちなみに北太平洋シーサイドラインは、十勝の広尾から根室の先にある納沙布岬まで続く300kmを指すそうです。景色的には釧路から根室までがメインなのかな。
道道142号をえっちらおっちら進むと、穏やかな湿原がありました。
遠くの方で動くものがあるので「なんだろう?」と目を凝らすと人がいます。釣り?漁?をされているのかな。何が釣れるのだろう。
私も釣りが好きなのですが、こんな穏やかなところで糸を垂らしていたら、心穏やかになりそうだなあ…なんて。
近くで馬の親子たちがたわむれていました。
土に体をこすりつけたり、親子で走り回ったり。
こんなに生き生きと生活している馬の親子の姿を見たのははじめてだったので、心にくるものがありましたね。やっぱりのんびり心穏やかに暮らしたいよね。
北太平洋シーサイドラインとの攻防はまだ続きます。
写真でみるとなんてことない道にみえるのですが、超地味にのぼっているんですよ。
激坂の後の緩やかな坂のコンボで、休むポイントが上手に取れません。これが小さいジャブの応酬になってひざにダメージが蓄積されます。
この頃ははっきりと右ひざに痛みが出てきていましたね。結局、道央で受けたダメージは治りきっていませんでした。
そういえば「牛横断注意」という珍しい看板を見つけました。畜産が盛んだからこそだと思うのですが、関東ではなかなか見かけませんね。
そういえば昔、熊本の阿蘇山の方に観光に行ったときに牛が道路を渡っていて、自分が乗っていた車が待機した記憶があります。
さて、少しするとまた森の中を抜ける道に入るのですが…。
「危険 熊出没注意」
あー…笑えないやつだー(白目)
しかしですねえ、写真見てもらえると分かる通りで、前にも後ろにも何もないところなのでもう走り抜ける以外どうしようもないんですよね。
苦し紛れに自転車のベルを定期的に鳴らし、大きな声で歌います。
「絶え間なく注ぐ愛の名を~永遠と呼ぶことが~!」
北海道に来てから誰もいないところで歌を歌うようになったのですが、連日歌いまくっているせいか日に日に高音域が出るようになっているのはGOOD。笑
この森はしばらく続きましたが、何事もなく切り抜けることができました。
熊出没注意の森を過ぎると、自販機や民家など人の気配が出てきて一安心。
少し進んだところに落石駅を発見。浦幌や釧路などで見かけたJRの線路ですね。この線路についていけば私が目指す根室まで導いてくれそうです。
走り続けると視界の先に街が見えてきます。恐らくあれが根室の街。
でも、そこに行くまでもかなり坂が多くて苦しめられました。根室は北海道東側の半島に作られた街なので、その周辺は坂が非常に多いんですよね。
街に入るまでも坂、街の中も坂です。もう右ひざが痛くて限界。
坂道の多い根室の街へ到着
無事、根室の駅に到着しました。釧路に比べると少し殺風景な感じがしますね。
街はメインの通りを最も高台として左右に伸びる道がすべて下り坂なんじゃないかって感じがします。魚の骨みたいな感じといったら伝わるかな。
そういえば、根室の駅前で写真を撮っていたとき、太平洋シーサイドラインの琵琶瀬の展望台で出会った香港の方とばったり再会しました。笑
やたらテンション高い方で話しているとこちらも楽しくなってしまいます。しばらく談笑した後、彼らは今からホテルに荷物を置きに行くんだーと言いながら去っていきました。会うときは会うなあ。
ゲストハウスという選択肢
自分も泊まるところどうしようかなあと思ってうろうろしていると、駅の横に観光案内所があったので中に入ってみることに。
街のことを色々と教えて貰うなかで、ゲストハウスという提案が引っ掛かりました。
ここに来るまで、野宿、泊めてもらう、キャンプ場は経験しましたよね。今後、漫画喫茶とライダーハウスは想定しています。ゲストハウスが抜けていました。
「ゲストハウス考えていなかったからいい経験かも!」
教えて貰った電話番号にかけてみると空きがあるというので、そこにお世話になることにしました。
お世話になったのは、ゲストハウスTOMAYAさんです。
私は観光案内所で電話番号を教えて貰ったのですが、楽天トラベルでも予約ができるようです。
ゲストハウスって生まれてはじめての経験でどんな感じかな…?と思っていたのですが、女将さんや先に来られていた方がすごく親切で隅から隅まで教えてくれました。
ちなみに素泊まりなので食べ物飲み物は持ち込みです。自転車圏内にスーパーやコンビニがあるので問題なし。
案内されたのは2人部屋です。
相部屋の男性の方は仕事で何日もここに泊まられているとのことでした。趣味で自転車をやられるそうで、このゲストハウスにも持ち込んでいるとのことで話が盛り上がります。
根室周辺のことを色々と教えて貰えました。
TOMAYAには共同のお風呂(シャワー)があるのですが、大きい風呂入りたい欲が出てしまって散歩がてら近所の銭湯に行きました。笑
やってきたのは天然温泉みなと湯です。
>>天然温泉みなと湯(*1)
温泉、銭湯が大好きなので、日替わりで色んなところのお風呂に入れるのは幸せですね。一日中体を動かした後に体を伸ばしながら入る風呂は最高です。
今日は寝床も決まっているし、のんびりとできました。
ちょっと気になるのは右ひざの状態ですね。根室の街に入る少し前から痛みだしていましたが、風呂に入っているとその痛みがよく分かります。明日以降が少し心配だな。
ゲストハウスに戻った後はお客さんたちと談笑を楽しみました。仕事の方、バイク乗りの方など色んな人がいて話していて楽しかったですよ。
北海道10日目まとめ
北海道10日目 73.15km走行(積算距離:622.23km) / 全行程12日目(750.26km)
霧多布岬を後にして、根室の街にやってきました。
北太平洋シーサイドラインに苦しめながらも着々と前に進んでいますね。日本最東端の納沙布岬を射程圏内に捉えました。
右ひざの状態が怪しくて、少し今後のことが心配なところもあるので無理をしないようにします。
しかし、早いもので、北海道にきてから10日も経過したのですね。右も左も分からず東京を出発した当初と比べると、少しは成長しているのかな。
現時点でも確実に1つだけいえるのは、スマホはなくても生活はできるということです。笑
参考にしたサイトや文献
*1 北海道公衆浴場業生活衛生同業組合 | 天然温泉みなと湯