『北海道海岸線一周(16) 道東編7 -斜里のライダーハウス『クリオネ』へ-』
ー前回までのあらすじ(前回は【道東編6】静かにそびえ立つ知床峠を越えて【標津→ウトロ】)
オホーツク海を北上中です。知床半島に入り、羅臼側から知床峠に挑戦しました。自転車は旅仕様で重量がありますが、必死にかけのぼりました。
峠の上りは快晴でしたが、峠の頂まで辿りつく頃には天気が一変して霧が発生。下りは視界の悪さと戦いになりました。
無事に下山し、ウトロの国設知床野営場で一夜を明かすことにしましたが近くの抜け道でシカに取り囲まれるのでした――
北海道15日目…知床半島を抜けて斜里の町へ
国設知床野営場にて目を覚ますと…
知床にある国設知床野営場で一夜を明かしました。知床はヒグマが多く生息する場所とあって、ちょっとした物音にも神経質になりますね。
知床峠と違ってまわりは人が多いので大丈夫だろうと思いつつ、ガサガサッって音がするとやっぱりビビる自分。
キャンプ場の夜は静かですから遠くの音もよく聞こえるんですよね。それがまた恐怖を煽るというか…。
何はともあれ無事に朝を迎えることができました。目が覚めたのでテントのジッパーを開けてみると…。
目と鼻の先に鹿が歩いていました。きっと昨日の夕方、私のことを取り囲んだあの一派の者だな…。
しかし、非日常な光景が日常になりつつある今日この頃。「ああ、鹿か…」なんて思う自分もいたり。慣れって怖い。
今回は近くでキツネも走り回っていました。エサを狙っているような感じがしました。朝から鹿やらキツネやら近づいてきます。さすが知床の自然は豊かですね。
ちなみにキツネはエキノコックスという寄生虫を持っていることが多いので、どんなに近づいてきても触っては駄目ですよ。
近づかれても嫌なので早々にテントの中に逃げ、ご飯を食べたら出発します。
ウトロの町を抜けて海岸線を北上する
キャンプ場を出発して、激坂を下ればウトロの町に戻りました。海岸線をちょっと進んだところに道の駅「うとろ・シリエトク」がありました。
道の駅って場所によって大きさや綺麗さ様々ですよね。ここは大きくて綺麗な建物でした。
コケモモと牛乳のミックスソフトがあったので購入しました。
コケモモソフトはウトロに来る手前の知床自然センターにもありましたね。知床周辺に自生するのかな。
オシンコシンの滝
ウトロ側の海岸線の道路は平坦でとても走りやすいです。羅臼側はアップダウンがありましたが、同じ知床の道路でも違うものですね。
ウトロ側の海岸線沿いの道路はちょこちょこ滝が流れていて観光名所になっています。
ウトロの町から進むと、まず現れたのは三段の滝です。
小さな滝で趣がありますね。看板が立っているのですが、観光客はいませんでした。
私みたいに静かな場所が好きな人にはいいかな。
次に現れたのはオシンコシンの滝です。こちらは駐車場があって観光客の人がちらほらといました。
とりあえず自転車で近づけるところまで進んでみました。この時点でも奥の方にみえるオシンコシンの滝は大きくて迫力が伝わってきます。
自転車は駐輪スペースに移動させて、近づいてみることにしました。
階段を中段まで進むと撮影スポットらしき場所に到着しました。意外と観光客の出入りがあって、人の流れがなくなる瞬間を待つのに少し時間が必要でした。
どうでもいい話ですが、一人で撮影待ちをしていると順番を抜かされてしまうことがあるんですよね(笑)ここに限らずですがあるあるです。
流れが切れたところで手早く撮影を済ませて、さらに階段を上までのぼっていきます。
最上段までのぼりました。滝を間近で見ることができて、なかなか迫力があります。マイナスイオンいっぱい出てるかな?
しかしながら、川とか滝が出す水の音っていいですよね。近くで聞いていてもうるさいと思いません。これが嫌な人間関係だと些細な音でもイラついたりしませんか。
イラつきの本質は、音量の大小ではないのですよね。そんなことを考えていました。
国道334号を進み斜里の町を目指す
オシンコシンの滝を後にして、引き続き国道334号を進みます。
しばらく行ったところに知床エゾシカファームの文字がありました。ご自由にお休みくださいとのことだったので寄ってみることにしました。
柵の近くから覗くと、奥の方にエゾシカが見えました。でも、野生でよく見かけるエゾシカを何故飼育しているんだろう?
その時は分からなかったので、後で調べてみました。すると、この知床エゾシカファームは鹿肉の加工、販売を行っている会社だったことが分かりました。増えすぎる野生動物の対策も大変だ。
>>株式会社知床エゾシカファーム(*1)
国道334号を道なりに進むと一旦内陸へ
ウトロから斜里に向かって伸びる国道334号はひたすら海岸線を進む道路でしたが、斜里の手前あたりで段々と内陸に入っていき海が見えなくなりました。
すると今度は畑が多くみられるようになりました。写真はニンジンの畑ですかね。細かに広がる葉が生い茂っています。
ベニバナインゲン(ハナマメとも。甘納豆の原料です)の花が綺麗に咲いていました。
涼しい環境でよく育つ(実る)とあって、この光景はさすが北海道といったところです。本州だと長野でも見たことがあります。広い土地があるとはいえ、つる性だから栽培管理が大変そうですね。
さて、そのまましばらく走って、斜里の町が見えてきて安心し始めた頃…。
「カシャン!、カラカラカラ…」
って変な音がしたんですよ。これは何か落としたぞと感じて一時停止しました。自転車を止めて点検を始めたのですが、異音の正体はテールライトのカバーでした。
テールライトは、キャットアイ REFLEX AUTO(TL-LD570-R)を使用しているのですが、(元々?)カバーの力が弱くて外れやすいことが分かりました。
リピートタイを所持していたので、それで固定したらしっかりとしました。詳細は以下の記事にまとめましたので、興味がある方はあわせてご覧下さい。
なにはともあれ、カバーを落としたの気付けてよかった。
斜里の街に到着、ライダーハウス『クリオネ』へ
昼過ぎだけど今日はこれ以上進まない
ちょっとしたトラブルはありましたが、昼過ぎに斜里の町に到着しました。
時間的には網走まで行くことも不可能ではありませんでしたが、今日は斜里の街で一泊します。
というのも、斜里の街には有名なライダーハウス『クリオネ』があるんですよね。この旅の中でも、その単語は何度も耳にしていました。
人気の多いところは得意ではないのですが、せっかくなので行ってみようかなと。
町の中を走っていると道の駅「しゃり」を発見しました。休憩がてらクリオネの場所を地図で探します。
道の駅で自転車乗りの旅人がいて雑談をしました。とても若い方で一日に漕いでる距離を聞いたら、私の倍近くでただただ驚くばかりです。たくましいなあ。
ひざの怪我で苦しんでいる話をすると「巻くタイプのサポーターがいいですよ!!自分も使っていてがっちり巻けます!」と教えてくれました。
実際に付けているところも見せてくれたのですが、簡単ですごく使いやすそう。早速そのサポーターを探しにいくことにしました。
サポーターを探しに斜里の町を走る
サポーターを教えてもらった場所が斜里で良かったです。というのも、斜里の町は大きくて、ホームセンターや薬局など何でも揃っているんですよ。
大きめの薬局を見つけて中を探すとサポーターを発見しました。購入したのはD&M ひざ・もも兼用型 スピードラップ D-98です。
それと近くのホームセンターで被って着用する長袖の上着を追加で購入しました。オホーツク海側は考えていたよりも寒かったので、早めに対策を取りました。
下記の記事の上からかぶるアウターがそれにあたります。価格は800円程度でその安さには驚きです。サポーター、上着とも北海道の旅終了後も使用しているので、今思えばすごく良い買い物でした。
追加の装備を揃えたので、ライダーハウスのクリオネに向けて走ります。
ライダーハウス『クリオネ』に到着した
町を少し外れたところを、だいたいこの辺かな~と走っていると、クリオネと書かれた大きな看板を発見しました。
中に入っていくと、ちらほらと人がいます。抜け出せなくなる沈没宿として有名とのことなのでそういう人たちなのかな…?とりあえずは奥にある受付のある建物に向かいます。
受付のある建物を見つけました。この建物もすごく立派ですし、クリオネ自体の敷地がすごく広くて驚きました。ライダーハウスってもっと簡素なイメージだったので。
入り口の左側に自転車があったので、そこに置かせてもらって中に入ります。
建物の入り口横にあった料金表です。画像クリックで拡大表示しますので、参考にどうぞ(写真は2017年当時のもの)
受付のある建物の中の写真です。外見も立派でしたが、中も立派!山小屋のような感じで趣があります。
この建物は売店も兼ねているようで、飲み物やボンベなどが販売されていました。
受付よりも少し早く到着してしまったみたいで、「時間まで椅子に座って待っていて下さい」と奥にあった椅子に誘導され、受付時間になったらすぐに対応してくれました。
今回は1500円の男女別のドミトリー(相部屋)にしました。500円で泊まれるライダーハウスも魅力的だったのですが、休める時にゆっくりしようと思いまして。
というのも、斜里に来てまたひざの痛みを感じていたんですよ。知床峠では緊張からか痛みを感じなくなっていましたが、当然治っていたわけではありませんでした。
こういう機会にしっかり休むのも大切ですね。
それと+1000円で夕食会に参加の権利とのことだったのでお願いしました。この日はすき焼きだそうです。そんなわけでまず荷物を部屋にあげてしまい夕食の準備をします。
ライダーハウス『クリオネ』を探検した
今回お世話になる2Fの相部屋に移動しました。荷物を置いて、とりあえず充電します。
今回の旅は上陸の初日にスマホが故障したので、MP3プレイヤーと写真撮影用のiPadが充電の対象です。
人と比べると圧倒的に充電対象が少ないのですが、それでもキャンプ場が続くとバッテリー残量が怪しい時がありました。充電は出来る時に、確実に、ですね。
相部屋入り口に張ってあった注意事項(クリックで拡大表示をします)
当たり前のことばかりですが、ここは中高年の湯治場ではありませんの記載が中々毒がある。
相部屋からみた2Fの風景です。木の感じが暖かみがあっていいですね。
遥か昔、祖父の家がこんな感じだったので、その感じを思い出しました。
2Fから見下ろした景色です。吹き抜けの構造はとにかく開放感があるのがいいですよね。
1Fは受付の他に風呂があるようです。
まだ夕食まで時間があったので外の散歩に行ってみることにしました。
テントサイトを借りた方はこの木の板の上にテントを張ります。昨日から天気が良くないですが、明日降らないといいなあ。
ここは食事をする場所のようです。先ほど受付した夕食会もここでやるようです。
昼間はいこいの場でギターを弾いたり談笑したりと自由な感じでした。
レンタル自転車もあります。その中に私と同じ自転車のプレシジョントレッキング(プレトレ)を発見!!!!!!改造はされていません。笑
でも、これが本来の姿なんですよね。私のプレトレは親選びを失敗して今回の旅に付き合わされていますが、どっちが幸せなんだろうな…。
何やら畑があったので近づいてみるといちごの畑がありました。食べ放題無料とのこと。笑
パッと見渡すと赤い実がなっていたので中に入って食べてみることにしました。
近くに行ってみるとぽつらぽつらと赤いいちごが実っています。
いちごって露地栽培だと5月あたりに実ります。北海道は涼しい分、収穫時期が少し遅れて夏になるのでしょう。
日本ではクリスマスのケーキ用途でいちごの出荷を間に合わせますから、12月のイメージが強いですよね。でもそれってハウスを利用した促成栽培の技術の賜物です。
今となっては冬のいちごがメインですから、露地栽培のいちごが見られたのはある意味ラッキーだったかもしれません。
何個かもいで食べてみました。酸味があって美味しいです。
最近の野菜や果物は甘さが追及されたものが多いですが、個人的には甘すぎず酸っぱさの残ったものが好きなんですよ。
トマトなんかも青臭さが少し残ったものが好きなのですが、見かけなくなりましたね。
いちごの花が咲いていました。いちごはバラ科なのでバラの仲間なんですよ。知ってました??
興味がある方はノイバラの花や葉の形と比べてみて下さい。ちなみにサクラや梨、北海道でよく見かけるハマナスもバラ科です。ちょっと知っていると面白いですよ。
いざ夕食会へ!新たな自転車乗りと出会いがあった
敷地内をまわっていると夕食の時間となりました。
空いている場所に座っていくのですが、目の前に座った方がたまたま自転車乗りでした。
話を聞いてみるとその方は学生で、今回は夏休みを利用して北海道をまわっているとのこと。自転車はロードバイクのようで普段も大会に出られているバリバリの自転車乗りです。
自転車観戦も好きとのことで話が盛り上がったのですが、好きすぎてブエルタ・ア・エスパーニャを生で観に行ったという本物でした(笑)
自転車の本場の大会(ジロ・デ・イタリア、ツール・ド・フランス、ブエルタ・ア・エスパーニャ)を生で観戦した人に会えたのは初めてのことでちょっと感動です。
しかし、若いうちにしっかり行動している人は輝いてみえますね。その時の写真を見せてもらったのですが楽しそうだったなあ。
食事の途中で、お互いの自転車を見せ合いっこしました。すると、この方もはじめての自転車はあさひで購入したとのことで、私の自転車を見るや否や「プレトレじゃないですか~!」なんて言ってくれました。
その後もご飯を食べて、周りの方とも楽しく談笑してお開きとなりました。風呂に入って就寝です。
北海道15日目まとめ
北海道15日目 47.64km走行(積算距離:948.63km) / 全行程17日目(1076.66km)
知床を離れて、斜里の町までやってきました。
今日は50km弱程度の走行でしたが、前日の知床峠越えで、再度、ひざの痛みを感じ始めていたのでちょうど良かったですね。
ひざのサポーターを購入したので、明日からはそれを付けていきたいと思います。
さて、ちょこちょこ噂で聞いていたライダーハウス『クリオネ』を訪れたのですが、想像以上に大きい敷地で面白い空間でした。
自転車、バイク乗りの間で居心地がよくて1つの地域に停滞してしまうことを、「沈没(ちんぼつ)する」といいますが、クリオネで沈没者が多発するのも分かる気がしました。
私は基本的に1人が好きですが、たまにはこういう雰囲気に混じるのも楽しいものです。
参考にしたサイトや文献
*1 株式会社知床エゾシカファーム公式HP | 株式会社知床エゾシカファーム